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5分間で読む-アニカ・ハインツ&メリー・インボング

異なる視点に開かれたプラットフォーム

国境を閉鎖する?国境を開く? ドイツで新型コロナウイルスをめぐるキャンペーンが重要な対話の口火を切る

バイエルンで新型コロナウイルスの1人目の感染者が確認されてすぐに、Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)ドイツで、最初の新型コロナウイルス関連のキャンペーンが立ち上がった。それは、バイエルンの周囲に壁を築くという馬鹿げた提案だったが、42の賛同が集まった。そして、その1カ月後には、私たちのサイトを舞台にコロナウイルス関連のキャンペーンが次々と開始されたのである。ほとんどのキャンペーンは、医療従事者へのサポートを提供するといった具体的な問題について、政策決定権者に出す要求として納得のいくものであった。その一方で、ドイツという国家が国民を守るためには何をすべきかという問題をめぐって深刻な議論を呼ぶような、対立を招きかねないキャンペーンも少なくなかった。

街頭での抗議活動や政治的デモが文化の一部となっているような国では、街頭での市民活動によるウイルス感染のリスクが高まっている中、市民参加の形態としてバーチャルな形態に傾斜していくのは時間の問題だった。彼らは、感染の恐れのある集会を避けて、店舗などの休業、旅行の禁止、公共の場での大人数の集会を厳しく規制することを要求するために、Change.orgなどの市民参加型のオンラインプラットフォームへと目を向けるようになったのである。 

私たちは、新型コロナウイルス感染が急拡大し始めて以来、論議を呼ぶキャンペーンの数が顕著に急増する状況を目にしてきた。その結果、市民と政策の決定権者が意見の分かれる問題をめぐって議論し、より多くの国民を守れるようなインパクトのある解決策を生み出すためのバーチャルな集会場となったのである。

ロックダウンに賛成、ロックダウンに反対

パンデミックが広がり始めた段階では、ドイツ連邦政府は新型コロナウイルス危機の初期段階から国民に対して全国的なロックダウンを宣言するなど、早々とさまざまな全国レベルの制限を課していた周囲のヨーロッパ諸国に遅れをとっていた。 

ドイツでは、全国的なロックダウン、外出禁止令、学校や店舗の閉鎖、大規模なパブリックイベントの禁止などを求めるキャンペーンがが数多く立ち上がっていた。例えば、ステファン・ドラシャンによるキャンペーンは、連邦政府に対して外出禁止令を直ちに発令するように求めるものであった。彼は、自分のキャンペーンページで、「これこそが、病院や医療従事者の過重な負担を避ける唯一の方法である」と述べている。

ドイツ政府は、遅ればせながら全国的なロックダウンを宣言したが、今度はそれをめぐって、大規模な経済活動の休止が与える国民経済への多大な影響に連邦政府が対処するにはどのような配慮が必要なのかという問題に関して、さまざまな見解を表明する新たなキャンペーンがChange.org上で展開されることになった。 

トーマス・マイヤーが立ち上げたものも含むいくつかのキャンペーンでは、ロックダウンという手段が本音ベースでどの程度まで必要だったのかという疑問が呈された。彼はそのキャンペーンで、「シャットダウンは間違いだったのか? 2020年3月のシャットダウンと私たちの基本的権利の停止はショックだった。社会的、経済的な影響は壊滅的なものだった。数え切れないほどの家計が破綻し、失業者や短時間労働者が数百万人単位で発生し、私たちは一夜にして1929年以来の深刻な経済危機に直面したのである」と述べている。

平均的アビトゥーア受験生:賛成、反対、それともその折衷?

ドイツの高校卒業生への影響はどうだろうか、というひとつのトピックをめぐって、Change.org(ドイツ)では約160件のキャンペーンが立ち上がった。ほとんどのキャンペーンはパウル・グリンゲル&フィリッパ・シュテフェンスによるキャンペーンのように、2020年の「アビトゥーア(大学入学資格試験)」の実施を再考するように求めるもので、政府は試験を全面的に中止して、高校生にはその代わりに平均点に応じた卒業証書を授与することを考慮すべきだと主張するものであった。

しかしながら、その一方でアビトゥーアの継続を求める学生たちからの反論もあったが、その場合でも実施にあたって具体的な要求が提起されていた。あるキャンペーンでは、「アビトゥーアを実施することを求める。感染のリスクを抑えるため、少人数のグループでの実施とそれに対応した試験監督者の増員を求める。試験の前後及び試験中に適切な健康・衛生措置(例えば、机や椅子などの消毒、ソーシャルディスタンスを配慮した受験生の席の設定、ペンなどの貸し借りの禁止など)を講じることを求める」と列挙していた。

興味深いことに、別のキャンペーンで第3の選択肢を提示するキャンペーンを立ち上げた学生もいた。それは、学生に試験を受けるかどうかを自らの責任で決めさせる措置を政府に求めるもので、「私たちの要求:2020年のアビトゥーアクラスの学生に対して、自分と家族の健康を危険にさらしてまで試験を受けるかどうかの選択をすることを認めるように求める。その選択肢は、1)今年のアビトゥーアに参加する、2)平均点による卒業証書の交付を求める-の2つである」という内容であった。

国境を閉鎖するか? それとも閉鎖しないか?

ヨーロッパ諸国の政府が国境を閉鎖して、国民に「ステイホーム」を要請する中、旅行の禁止と特定のグループに対して国境を開くべきかという問題について立場の異なる懸念が生じてきた。 

ドイツもまたヨーロッパの近隣諸国にならって、可能な限り迅速に国境を閉鎖すべきであると主張する10件のキャンペーンは、5,813の賛同を集めた。しかしその一方で、家族はどうするのか?お互い異なる国籍をもつパートナーの場合はどうするのか?難民はどうするのか?という問題を指摘する市民も出てきたのである。

例えば、#LoveIsEssential(ラブ・イズ・エッセンシャル)というハッシュタグと共に、5月に立ち上がったキャンペーンは、カップルについては旅行禁止を解除することを求めるものであった。また、二国籍をもつカップルと家族については入国制限を解除することを求める同様のキャンペーンもあった。二国籍家族とパートナーシップ協会が開始したキャンペーンは、「ゼーホーファー、マース様 二国籍カップルとドイツへの入国ビザをもつ人々の入国許可をお願いします。家族が一緒に暮らせるようにお願いします!」と主張している。

その一方で、 “#LeaveNoOneBehind(誰も置き去りにしない)”というキャンペーン は、過密状態にある難民キャンプの問題に対処するために国境を再開するとともに、ホームレスに医療サービスを提供することを政府に要求して、新型コロナウイルスをめぐるキャンペーンの中でもっとも急速に賛同を集めたキャンペーンとなった。 “#LeaveNoOneBehind”というハッシュタグは、人々のアクションを求めて全国の道路など公共スペースに描かれるようになり、オンライン、オフラインを問わず至る所で目に付くようになった。

パンデミックの最中にドイツは難民に対して国境を開くべきか、閉鎖すべきかを問うChange.org上のキャンペーン

#LeaveNoOneBehindのキャンペーン発信者は、キャンペーンを通じ、賛同者たちに対して、この問題について議論を活発化させるためにできるさまざまな抗議行動があることを告知していった。賛同者たちに対して、メールで政策決定権者にコンタクトをとるよう呼びかけ、キャンペーンへの連帯を表明するために窓のそとに蝋燭を灯してもらう象徴的な形のイニシアティブ、#LeaveALightOnを開始した。また、ドイツの国境外との対話を増やす努力をすることなども促した。このキャンペーンは、数百人の難民に対してドイツが国境を開くというインパクトのある動きとして結実した。

意見の分かれるキャンペーンが展開されることは、私たちのプラットフォームでは珍しいことではないが、新型コロナウイルスの流行は、新たなパンデミックにどのように対応したら良いのかという疑念が世界的に広がっている中、相反するキャンペーンが広がりを見せることによって、異なる意見がどのように不確実性に対応するための解決策となっていくかを示したのである。

すなわち、これらの新型コロナウイルスにフォーカスしたキャンペーンは、意見は二極化しているものの、一般市民の生活に真の意味で影響を与えるような大胆な施策の実現をめぐる対話、さらに市民がこの危機に対処し、適応していくのを支援するのに必要なプログラムや政策の変更はどのようなものかという議論を活発化させていったのである。Change.orgというプラットフォームは、公衆衛生や経済というきわめて議論の分かれる問題を論じようとする市民にとってのバーチャルな広場となるもので、新型コロナウイルスやその流行がもたらす不確実性への戦いにおいて欠かすことのできないインパクトを生み出そうとする市民にとってのツールとなっているのである。

筆者: アニカ・ハインツ
キャンペーン・ディレクター(Change.org ドイツ)
編集者: メリー・インボング
ラーニング・アソシエイト(Change.org財団)