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政策決定者からの注目の高まり

フランスでは大臣たちがオンライン署名に応えている

私たちの世代の人間はこれまで、不可解なウイルスによって世界中に引き起こされた歴史的なパンデミックを経験したことはなかった。この前例のない出来事は、私たちのこれまでの信念を揺るがし、ライフスタイルを改めて考え直させ、「ニューノーマル(新しい日常)」という新たなコンセプトが生まれるに至った。

Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)フランスのプラットフォームにおいて、新型コロナウイルスの流行が始まるまで、具体的には2カ月間のロックダウンの実施まで、これ程までのアクションが見られたことはなかった。世界的な傾向と同じく、フランスで立ち上がったキャンペーンの数は3倍となり、これらのキャンペーンに対する賛同数は2倍となった。そして、それに反応する政治家や政策の決定権者からの反応数も過去最高となったのである。

2カ月間でフランス政府の閣僚6人が新型コロナウイルスによる健康危機に関連するキャンペーンに応えた。建設、保健、スポーツ、教育、文化、経済関係の閣僚たちがChange.orgのユーザーたちとの対話を行うことを決定した。

彼らが答えようとしたテーマはさまざまで、ホームレスに対する全国規模での経済支援の要求、ロックダウンと閉塞状態に対処する手段としての屋外への責任あるアクセス、無料の大規模検査など、それらは実に多岐にわたる。

フランスで10万人以上が賛同したキャンペーンに、“Covid-19 testing for all”(全員に新型コロナウイルスの検査を)がある。このキャンペーンが比較的短期間のうちにこれだけ多くの賛同を集めたことは、オンライン署名がコロナ禍に多くの人に働きかける手段としての役割を担っていることを示した。実際、オンラインを利用したアクションは、私たちの意見を声として届けるための最も利用しやすい方法になっている。

国益にからむ問題として、フランス保健相のオリビエ・ヴェランは、Change.orgのプラットフォームがフランス市民の見解や緊急の要請に対応するための効果的な方法であると考えた。このプラットフォームの政策決定者ツールを利用して、彼は市民たちとオンラインで関わりをもち、参加している数千人に向けて返答を公開したのである。

ほぼ同じ頃、他の3人の閣僚も後に続き、その他の新型コロナウイルス関連のキャンペーンに応えた。

経済相のブリュノ・ル・メールは、シェフのステファーヌ・ジェゴが3月17日に立ち上げた“Save our restaurants and producers!” (私たちのレストランと生産者を救ってください!)というキャンペーンにに応えた。このキャンペーンは、レストランが保険会社から補償を受け取れるように、政府に対して緊急事態宣言を発令することを求めるもので、14万以上の賛同を集めた。

一方、文化相のフランク・リーステールは、“the renewal of the rights of intermittent entertainment workers” (非正規雇用ののエンターテインメント労働者の権利の更新)を求めるキャンペーンに応えた。このキャンペーンは、本稿執筆時点で20万を超える賛同を集めている。

最後に、スポーツ担当相のロクサナ・マラシネアヌは、 “responsible access to nature during a period of confinement” (外出制限期間中の責任ある自然へのアクセス)を求めるキャンペーンに応えた。

このキャンペーンの発信者であるビリー・フェルナンデスは、「ソーシャルディスタンスのルールを厳格に遵守した場合の自然へのアクセスと、客観的に見て高いリスクをともなわない活動に限り屋外へのアクセスを許可すること」を求め、16万を超える賛同を集めた。

閣僚たちによるこれらの反応からは、ロックダウン期間中にChange.orgユーザーによって表明された、さまざまな緊急の問題に対処するために、政府内で閣僚たちによる協議が行われたことがうかがえる。

近年、国政のトップクラスからのこうした反応が増加している理由は何か?

市民の声に耳を傾け、それらに真摯に応える傾向は、この2、3年の間で特に加速している。フランスでは、「黄色いベスト危機」(2018-19年)が政策決定者たちがこのような傾向にシフトするきっかけとなった。この市民による抗議運動は、Change.orgで立ち上がったキャンペーンを契機に生まれたもので、1年以上にわたって数千人の市民が毎週街頭に出て抗議した。

キャンペーンとそれによって引き起こされたアクションを通じて表明される多くの一般市民による激しい抗議は、それに関わる政治家たちが市民とオープンに対話をする必要性に対する認識を高めることにつながり、市民の声を聞き、その声を実際の政策決定プロセスに取り込んでいく流れを生んだ。Change.orgフランスは、政治家たちが民意をチェックすると同時に、市民とコミュニケーションをもつ場となっていったのである。

政策の決定権者にとっては、キャンペーンになんらかのに反応を示すことが、市民と関わるだけでなく、危機管理にもつながることになったのである。またある意味では、この戦術は、権力の座にある人々が市民の関心の的となっている問題を遅滞なく認識し対応しさえすれば、「黄色いベスト危機」のような全国的な抗議運動を避けることができるかもしれないことを証明したと言える。

Change.orgフランスの事務局長であるサラ・デュリューは、この一連の市民のアクションがもたらしたの新しい時代を以下のように述べている。

「こうした政治家の反応から、Change.orgが近年(特に外出が制限されている現在)、これまで以上にオンラインを人々を動かすためのツールとして活用する市民たちと政治家が直接的かつ効果的にコミュニケーションをとるための特別な場となっていることが確認できます。Change.orgで立ち上がったキャンペーンの賛同者に応えることは、政府にとっても効果的な手段なのです。」

筆者: ベルカセム・ネイサー
アソシエイト・コミュニケーション・ディレクター(Change.org フランス)